ブラック企業は特定の定義があるわけではありませんが、一般的に極端に労働時間が長かったり、コンプライアンスを守っていなかったりなどの特徴があります。辞めたくてもなかなか辞められない、無理な引き止めにあう、場合によっては賃金の支払いをしないなどトラブルになることも少なくありません。
ブラック企業を辞めるためには、十分な準備をしてはっきりと上司に伝えることが重要です。それでも、辞められない、無理に引き止められるといった場合は労働基準監督署に相談したり、内容証明郵便で退職届を送付したりするなど対策が必要です。
目次
ブラック企業とは
ブラック企業に定義はありません。しかし、ブラック企業には共通の特徴が挙げられます。過度な労働時間や長時間労働、不適切な労働条件、賃金未払い、健康や安全への配慮の不足などがその特徴です。労働基準法に違反し、労働者の権利や福祉を軽視する姿勢が顕著です。また、適切な労働環境を提供せず、労働者の負担を増加させることもしばしばみられます。
厚生労働省によるブラック企業とは
厚生労働省でブラック企業の定義を明確にしているわけではありません。しかし、極端な労働時間やノルマを強制している、コンプライアンス意識が低いといった特徴を記しています。このため、これらの特徴に当てはまる企業はブラック企業であると考えられています。
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
ブラック企業で勤めることによる影響
ブラック企業に勤めることで、健康面で大きな被害が出る場合があることが特徴です。例えば、精神的に追いつめられることからうつ病になるケースが少なくありません。うつ病になると通常どおり仕事ができないだけでなく、普段の生活にまで影響の出る場合があります。
さらに、トイレにも行かせてくれないことによる膀胱炎や風邪で休めないことによる肺炎など、さまざまな影響が見られます。過酷な労働環境は身体的な健康にも悪影響を及ぼし、病気や体調不良のリスクを高めます。ブラック企業での勤務は健康を害する可能性が高く、適切な労働環境を求めることが重要です。
退職すべきかどうかを判断するポイント
ブラック企業だからといってすぐに辞めるのではなく、冷静に判断することが重要です。判断するポイントとして次の点が挙げられます。
- 第三者に相談する
- 自分次第で環境を変えられないか判断する
第三者に相談する
辞めるべきかどうかを判断するために第三者に相談することが重要です。主観でブラックと思っていても、周りからみると決してブラックではない場合もあります。友人や家族、信頼できる同僚など、異なる視点からの意見を聞くことで客観的な判断をすることが可能です。
また、労働組合や労働相談窓口などの専門家に相談することも効果的です。自分の状況や悩みを共有し、適切なアドバイスを受けることで、最良の選択をするサポートが得られます。
自分次第で環境を変えられないか判断する
辞める前に自分自身で環境を変えられないかを考えることも重要です。例えば、自身がさらに努力をすることで上司から認められて、仕事環境が変わる可能性があります。努力だけでなく、コミュニケーションや問題解決能力の向上なども試みることで職場の状況がよくなる場合もあります。
さらに、上司や同僚との対話を通じて、不満や課題を共有することも大切です。職場全体の改善に貢献する姿勢を見せることで、環境がより働きやすくなる可能性があります。ただし、努力や改善の試みが効果をもたらさない場合もあります。限界を感じるときや健康を害する状況であれば、退職を検討することも大切です。自身の状況や将来をよく考え、適切な判断をすることが重要です。
ブラック企業を辞めるために準備すべきこと
退職すべきかを冷静に検討して辞めるべきと判断をした場合、上司に退職を伝える前に準備万端であることが求められます。スムーズに辞めるためにも次のことが必要です。
- 就業規則の把握
- 引き止めづらい退職理由を準備
就業規則の把握
ブラック企業を辞めるためにまずすべきことは就業規則の把握です。就業規則は会社によって異なり、退職を申し出る期間が設定されています。しかし、就業規則の内容は会社独自のルールであり法律で設定されているわけではありません。
民法第627条では、退職希望日の2週間前までに申し出ることで退職できると定められています。企業は引継ぎをしたり後継者を採用したりするために就業規則で退職を申し出る日を設定しています。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法
引き止めづらい退職理由を準備
上司が引き止めにくいような退職理由を考えることで、少しでもトラブルにつながらないような工夫をすることが可能です。例えば、やりたい仕事がある、キャリアアップをしたいなどの退職理由が効果的です。家族が病気である、介護が必要といった理由は一見効果的なのですが、嘘である場合はばれた時にトラブルにつながる可能性があります。
退職理由を工夫することが重要ですが、嘘をつくのはおすすめできません。自身のキャリアや人生の方向性に合った退職理由を考え、それに基づいて丁寧に対応することが大切です。具体的な退職理由や新たなステップについても述べ、自分の意思を確かなものとして伝えることが重要です。これにより、上司も納得しやすくなり、円満な退職につなげることができます。
退職の意思を上司に伝えるときのポイント
退職の意思を上司に伝えるとき次のようなポイントが挙げられます。
- はっきりと伝えること
- 上司と話す時間をもらうこと
はっきりと伝えること
退職の意思を上司に伝えるときは、はっきりと伝えることが重要です。ブラック企業であればはっきりと言わないと引き止められやすくなる場合があります。特に辞めようと思っていると相談するように伝えるのはおすすめできません。退職の意向を伝える前に、自身のキャリアや将来の目標を整理しておくと効果的です。
具体的なプランを持っていることは、上司に対しても説得力を持たせる一因となります。しかし、ブラック企業の場合は引き止められる可能性が高いため、自分の意志を曲げずに伝えることが重要です。適切なコミュニケーションを心がけつつ、堅実な準備を整えてから上司に話しかけることで、円滑な退職プロセスを進めることができます。
上司と話す時間をもらうこと
退職の話をするときは立ち話やほかの従業員がいる前ではなく、上司にアポをとることが重要です。特にブラック企業のような状況では、プライバシーが守られた環境で話すことが大切です。アポをとることで、上司も十分な時間を確保してくれる可能性があります。退職の理由や今後の展望をじっくり伝えることができ、上司もその内容に適切に対応できます。さらに、アポを取る前に自分の考えや要望を整理しておくことも重要です。
何を伝えたいのか、どのような意図を持って退職を考えているのかを明確にすることで、上司とのコミュニケーションもスムーズにしやすくなります。最終的に、アポをとる際には丁寧な言葉遣いや礼儀正しい態度を心がけることが重要です。プロフェッショナルな姿勢で接することで、円満な退職プロセスを進めることができます。
ブラック企業を辞める際の注意点
どれほど工夫をしても、スムーズに辞めさせてもらえない場合があります。ブラック企業を辞める際次の点に注意が必要です。
- 退職を拒否される可能性がある
- 離職票を準備してくれない可能性がある
退職を拒否される可能性がある
ブラック企業は、退職を拒否されることが特に多い傾向にあります。しかし、法律上では労働者が退職を申し出たとき会社は拒否できないと記載されています。つまり、労働者が退職を希望した場合、その意思は尊重されなければなりません。
この規定は、労働者の権利を保護し過酷な労働環境からの脱出を支援するためのものです。しかし、実際にはブラック企業のなかにはこの法律を無視するケースも非常に多いため、労働者は労働組合や労働基準監督署などに相談することで、自身の権利を守る手段を持つことが重要です。
離職票を準備してくれない可能性がある
退職が決まっても離職票を交付しない場合があります。一般的に離職票を受け取るまで10日〜2週間ほどかかりますが、その期間が過ぎても届かないようであればまず会社に相談をしてください。それでも離職票を発行しない場合は、労働基準監督署やハローワークに相談することが必要です。
これらの機関は労働者の権利保護に関するアドバイスや支援をおこなっており、適切な対応をサポートしてくれます。自身の権利を守るためにも、離職票の取得に関する問題が発生した際には積極的に相談することをおすすめします。
退職を拒否された場合の対策
退職を拒否された場合、次のような対策方法が考えられます。
- 内容証明郵便を利用する
- 未払いがあった場合は労働基準監督署に相談する
- 退職代行サービスを利用する
内容証明郵便を利用する
ブラック企業は、上司に退職する意思を伝えたり退職届を提出したりしても辞められない可能性があります。このような場合は、退職届を内容証明郵便で送付する方法があります。内容証明郵便は、送付日や内容が証明されるため、法的な証拠として有効です。
そのため、退職意思を確実に伝えることができ、退職をスムーズに進めることが可能です。退職届を提出した際に拒否された場合でも、内容証明郵便の送付によって、自分の意思を明確に訴えることができます。
未払いがあった場合は労働基準監督署に相談する
給与が未払いの状態でも、退職意思を伝えたことで支払いを拒否される場合があります。言葉で伝えても支払いをされない場合は、労働基準局に相談することがおすすめです。労働基準局では、未払い以外でも問題を抱えている場合は相談できます。労働基準局は労働者の権利を保護し、適切な対処を支援します。
退職代行サービスを利用する
自分で何をしても解決できない場合、退職代行サービスを利用することが1つの解決策です。代行サービスを依頼することで、会社の人と会うことなく退職できます。退職代行サービスは、専門のアドバイザーや弁護士が代わりに交渉や手続きを行ってくれるサービスです。
具体的な退職理由や条件に応じてプロの助けを受けることで、円満な退職が実現できる可能性があります。ただし、代行サービスを利用する際には信頼性や費用、契約内容などをよく確認することが大切です。自分に合った解決策を見つけるためにも、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
まとめ
ブラック企業では、一般の企業と比べても辞めたくてもなかなか辞められないケースがあることが一般的です。退職前に十分な準備をしたり、上司にはっきりと意思を伝えることが求められます。
誠意ある対応をしても辞められない、困ったことがある場合は労働基準局に相談したり、場合によっては退職代行サービスを使ったりすることが必要な場合もあります。特に、法律で定められた労働条件を侵害されている場合や、退職に関する問題が起きた際には、適切な専門家の助けを借りることで自身の権利を守ることが大切です。