リファレンスチェックは、応募者の過去の職歴における成功や課題、コミュニケーションスキル、責任感、協調性など、多くの側面を評価するのに役立ちます。これにより、採用者は候補者の適性をより正確に判断でき、信頼性の高い情報を得ることが可能です。
リファレンスチェックは採用プロセスの透明性と正確性を向上させ、最終的な採用決定に大いに貢献します。リファレンスチェックによって、候補者の適性だけでなく、候補者の職場での振る舞いやコミュニケーション能力に関する詳細な洞察を得ることができます。
目次
リファレンスチェックとは
リファレンスチェック(Reference Check)とは、応募者の実績や前職での勤務態度などを前職に確認する調査のことです。日本では一部の大手企業や外資系企業などで導入されています。
リファレンスチェックの手法は企業によって異なりますが、転職エージェントや応募先企業が応募者の前職の上司や同僚、あるいは業界内の専門家に対しておこなうことが一般的です。書類形式と面接形式があり、面接形式の場合は電話のほかビデオ通話でおこなうケースが増えています。
リファレンスチェックは採用通知前におこなうことが一般的ですが、企業によっては内定を出してから採用通知後や選考途中でおこなう場合もあります。
リファレンスチェックでの質問内容
リファレンスチェックでは、勤務状況や人物像などの質問をすることが一般的です。例えば、前職での在籍期間や業務内容、勤務態度、実績などの勤務状況を確認できます。応募者が前職でどれくらいの期間勤務していたかを確認することが可能です。長期間の雇用は、安定感やコミットメントを示す可能性があります。
応募者の担当業務や職務内容について尋ねます。これにより、スキルや経験の適合性を評価できます。勤務中の姿勢やコミュニケーション能力、チームでの協力度など、勤務態度に関する詳細な情報を得られ、応募者の実績を裏付ける情報を収集することも可能です。
前職調査との違い
リファレンスチェックで前職での働きぶりや実績などを確認します。候補者の前職での実績や勤務態度を確認し、前の雇用主や同僚から得られる情報を通じて候補者の能力や適性を評価します。
対して、前職調査は履歴書や職務経歴書に書かれた経歴に間違いがないかどうか、トラブルがなかったかどうかを確認する調査です。これにより、候補者が提供する情報の正確性を保証し、採用プロセスにおける透明性を高めることができます。
リファレンスチェックが必要な理由
リファレンスチェックは次のような理由があるため必要です。
- 応募者の働き方や人柄を把握できる
- 採用ミスマッチを減らせる
- コーポレートガバナンスを強化できる
応募者の働き方や人柄を把握できる
リファレンスチェックすることで、応募者の働き方や人柄を把握できます。企業はより信頼性の高い採用決定を下し、適切な候補者を見つけやすくなります。
採用ミスマッチを減らせる
リファレンスチェックをおこなうことで、応募者との間でより正確にマッチしているかどうかを判断することが可能です。入社後に企業の雰囲気や価値観の相違を減らすことで、採用業務の負担を減らせます。
リファレンスチェックによって、過去の雇用主や同僚からの情報を収集し、応募者の実績、態度、コミュニケーション能力などを客観的に評価できます。これは、履歴書や面接だけでは把握しきれない情報を提供し、採用判断をより確かなものにします。
コーポレートガバナンスを強化できる
企業は不正をはじめとするトラブルによって信頼を落とさないようにするため、コーポレートガバナンスに取り組むことが必要です。応募者が過去に不正をしていないか確認することが大切です。応募者によっては経歴や職歴などを虚偽申告する場合があるため、対応が求められます。
リファレンスチェックのメリット
リファレンスチェックには次のようなメリットがあります。
- 候補者を深く知ってもらえる
- 面接で伝えられない部分を補完できる
- 入社後も支援してもらいやすい
候補者を深く知ってもらえる
リファレンスチェックをすることで、応募者の前職での勤務態度を明確にできます。そのため、業務内容や実績以外にもさまざまな面で深く知ってもらうことが可能です。リファレンスチェックでは、元上司や同僚からの情報を収集し、応募者の協調性、コミュニケーション能力、責任感、ストレス耐性、自己管理能力など、職場での実際の振る舞いについて理解を深めます。
これにより、応募者が過去の経験からどれだけ学び、成長し、協力する意欲を持っているかを把握できます。また、リファレンスチェックは、個人の特性や価値観に関する情報も提供します。これは、チームとの調和や文化適合性を判断するうえで非常に重要です。応募者が企業の文化や価値観に適合し、長期的な成功に貢献できるかどうかを評価する一環として利用されます。
面接で伝えられない部分を補完できる
面接中に自分自身をアピールできるのは質疑応答の時間だけであることが一般的です。しかし、リファレンスチェックがあることで、第三者が伝えきれない要素を応募先の企業に伝えたり、アピール内容の裏付けをしたりできます。
また、第三者からの客観的な評価であることから企業が受け入れやすい点も特徴です。これにより、面接中に伝えきれない重要な要素や特性を企業に伝える機会を提供します。応募者は、リファレンスとのやりとりを通じて、自己評価とは異なる視点での評価を受け、アピール内容の裏付けとして活用できます。
入社後も支援してもらいやすい
リファレンスチェックは入社時の見極めだけでなく、入社後にも活用されることが一般的です。リファレンスチェックをすることで応募者の価値観や人柄、仕事への取り組み方などを把握できます。そのため、入社後に活躍しやすい環境を提供しやすくなります。
リファレンスチェックによって明らかになった応募者の仕事への取り組み方や能力は、トレーニングや人材育成の策定に役立ち、従業員のスキル向上を支援します。さらに、応募者の適性や強みを把握することで、適切なプロジェクトや責任を割り当て組織全体の生産性を向上させることが可能です。
リファレンスチェックを実施するプロセス
リファレンスチェックを実施する場合次のようなプロセスとなることが一般的です。
- 応募者に同意を得る
- 調査先を探す
- 質問内容を決定する
- リファレンスチェックをおこなう
応募者に同意を得る
リファレンスチェックをおこなううえで、応募者に同意を得ることが必要です。応募者の同意なしにリファレンスチェックをおこなうと個人情報保護法により違法となります。
同意を得るために、応募者に対してリファレンスチェックが採用プロセスの一環としておこなわれること、どのような情報が収集されるか、それが採用判断にどのように影響するかを説明することが必要です。応募者が同意しない場合、リファレンスチェックはおこなえません。
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
引用元:個人情報保護法23条
調査先を探す
応募者に同意を得たら、次にリファレンスチェックを実施するための調査先を探すことが必要です。リファレンスチェックを実行する際、重要なのは情報提供者の信頼性と客観性です。
したがって、調査先は通常、応募者の前職の上司や同僚、あるいは業界内の専門家といった、信頼性の高い人物から選ばれます。これにより、採用者は客観的な評価を受けることができ応募者のスキル、態度、実績に関する信頼性の高い情報を収集できます。
質問内容を決定する
経歴や人物像、実績などリファレンスチェックで確認する質問内容を決定します。応募者の在籍期間の確認や性格や人物像など、面接だけでは確認できない質問を設定することが一般的です。
リファレンスチェックをおこなう
質問内容や日時などが決定したら、リファレンスチェックを実施します。リファレンスチェックによって得られる情報は、応募者の実績、勤務態度、コミュニケーションスキル、人柄などに関する洞察を提供します。これにより、採用者は応募者の適性や信頼性を客観的に評価し、面接や書類審査だけでは得られない情報を手に入れることができます。
リファレンスチェック導入にあたっての注意点
リファレンスチェック導入にあたって次のような注意点が挙げられます。
- 応募者の同意が必要
- リファレンスチェックの結果だけで判断しない
応募者の同意が必要
リファレンスチェックを導入するにあたって、応募者の同意が必要です。リファレンスチェックは個人情報に関わるプロセスであり、候補者の前職での業績や職務経歴などの情報を第三者と共有するものです。そのため、個人情報の保護とプライバシーを尊重する観点から、応募者の同意が必要です。
応募者の同意を得るプロセスは、採用プロセスの一部として透明で公正な方法で実施されるべきです。候補者に対して、リファレンスチェックがおこなわれる旨を説明し、同意を得る際には具体的な手続きや情報提供者についても説明が必要です。
リファレンスチェックの結果だけで判断しない
リファレンスチェックの結果だけで判断しないことが重要です。例えば、リファレンスの依頼先が応募者の短所を話してくれるとは限りません。そのため、リファレンスチェックの情報を鵜呑みにすると、採用に関する正しい判断をできない場合があります。
リファレンスチェックは、応募者の強みや長所を裏付けるためにも利用できますが、その際にはバランスを保つことが重要です。リファレンス提供者のコメントは、過去の仕事に関する肯定的な側面に焦点を当てることが一般的です。
まとめ
リファレンスチェックをすることで、応募者のスキルや適性、コミュニケーション能力についての情報を得られます。これにより、履歴書や面接だけではわからない情報を入手し、採用決定をより的確におこなうことが可能です。そのため、応募者は面接や職務経歴書などで伝えられる内容以上に応募先の企業にアピールできます。
リファレンスチェックは採用者にとって重要な意思決定ツールであり、採用プロセスの透明性と的確性を高める役割を果たします。リファレンスチェックによって、企業は最適な候補者を選び、その適性やスキルを最大限に活用するための信頼性の高い情報を入手することが可能です。