エンプロイージャーニーとは、従業員が入社から退職までに企業で経験する道のりのことです。近年ではHRや人事領域においてエンプロイーエクスペリエンス(従業員体験)を重要視する企業が増えたことから、エンプロイージャーニーの需要性が高まりました。従業員が自らの経験に満足し育まれることでエンゲージメントが向上します。エンプロイージャーニーを重要視することで、企業は企業評価が高まるほか生産性の向上も期待することが可能です。
目次
エンプロイージャーニーとは
エンプロイージャーニーとは、従業員一人ひとりが企業に入社をしてから退職をするまでに体験をすることです。従業員がさまざまな経験をしてスキルを身につけることで、従業員満足度やエンゲージメント向上が期待できます。
エンプロイージャーニーを理解するためには、エンプロイージャーニーマップが役立ちます。このマップは、入社から退職までの各段階で従業員が経験する出来事や感情を可視化し、企業はそれに基づいてサポートや改善をおこなうことができます。
エンプロイージャーニーを明確にする目的
エンプロイーは従業員、ジャーニーは旅を意味しています。エンプロイージャーニーは、従業員が仕事においてどのように発展し、どのような経験を積むかを把握するために重要です。
エンプロイージャーニーの導入で企業は従業員の課題や強い面、成長の機会を把握することで従業員一人ひとりに応じたサポートや環境の整備が可能となります。例えば、研修の内容や配置転換などに活かすことが可能です。
エンプロイージャーニーマップ
エンプロイージャーニーを実現するためには、エンプロイージャーニーマップが必要不可欠です。エンプロイージャーニーマップには、エンプロイージャーニーを可視化したものを記載します。
エンプロイージャーニーマップを使って従業員と企業とのつながりを明確にすることで、従業員の教育につなげることが可能です。従業員が自身の成長を感じ、仕事に満足感を持つことで、企業の生産性や従業員の定着率が向上します。エンプロイージャーニーマップの導入は、従業員と企業の相互理解を深め良好な労働環境を構築できます。
エンプロイージャーニーマップとエンプロイーエクスペリエンスの違い
エンプロイーエクスペリエンスは、従業員が企業内で体験や経験することです。業務の内容や関連したスキルを得ること、上司や同僚との人間関係が含まれます。近年ビジネスでは従業員に充実した経験をしてもらうことを重要視しています。エンプロイーエクスペリエンスが向上することによって従業員一人ひとりのモチベーションが上がりやすく、生産性の向上につなげることが可能です。
エンプイージャーニーマップとは、従業員一人ひとりの入社から退職までの道のりを可視化したものです。エンプイージャーニーマップを作成するためには、エンプロイーエクスペリエンスの可視化が求められます。
エンプロイージャーニーに注目するメリット
エンプロイージャーニーには、次のようにさまざまなメリットがあるため注目されています。
- 従業員満足度の向上
- 従業員体験価値の向上
- 企業評価の向上
従業員満足度の向上
エンプロイージャーニーを充実させることで、従業員満足度の向上につなげることが可能です。従業員が業務において成長し業務に必要なスキルを磨くだけでなく、上司や同僚との円滑なコミュニケーションや協力関係も築けるようになります。エンプロイージャーニーの導入によって従業員のモチベーションを高め、結果的に企業にとって生産性の向上につなげることが可能です。
従業員満足度を高めるために体験価値を改善することで、エンゲージメントが向上します。エンゲージメントが向上することで離職率が低下し人材の定着率を高められます。人材が安定すれば安定した結果を出し続けること以外に、採用コストや研修コストの削減をできる点も特徴です。
従業員体験価値の向上
エンプロイージャーニーの導入は従業員体験価値の向上にも役立てられます。従業員体験価値とは、従業員が勤務していて感じる幸福度や満足度のことです。従業員体験価値は従業員一人ひとり異なり、従業員ごとに寄り添ったエンプロイージャーニーが必要です。
エンプロイージャーニーを充実させるためには、エンプロイーエクスペリエンスを可視化し継続して見直すプロセスが必要となり、入社時の研修から日常業務、退職に至るまでのプロセスにおいて従業員の取り組みや考え方、感じ方などに関するデータを分析することが求められます。
企業評価の向上
企業がエンプロイージャーニーを導入することで、企業評価を向上できます。従業員の満足度が上がることで企業内の雰囲気が良くなり、職場の雰囲気を改善することが可能です。良好な労働環境は従業員が仕事に対してよりモチベーションを持ち、生産性が向上することが期待されます。
良好な職場環境と従業員の成長機会が結びつくと、従業員が自発的に企業を評価し良い評判を広めることが期待されます。口コミや社内外のコミュニケーションによって企業の魅力が広く知れ渡ります。企業評価が上がると優秀な人材を確保しやすくなるほか顧客の信頼獲得にもつなげることが可能です。
エンプロイージャーニーを作成するプロセス
エンプロイージャーニーは、一般的に次のようなプロセスで進めていきます。
- 従業員に対するヒアリング
- 社員像の設定
- フェーズの設定
- 施策を決定
従業員に対するヒアリング
エンプロイージャーニーを作成するためには、まず従業員一人ひとりに対してヒアリングをおこなうことが重要です。従業員一人ひとりが考えていることや思っていることを把握することで、より具体的なエンプロイージャーニーを作成できます。
例えば従業員が研修に対してどのように感じているのか、今後どのようなスキルを身につけていきたいのかなどをヒアリングします。また、年齢や職種、性別など偏りがないようにヒアリングすることも重要です。
社員像の設定
従業員一人ひとりにヒアリングをおこなって得た情報を基に社員像の設定をしていきます。行動パターンや現在抱えている課題、考え方などを分類することで社員像を明確にしていきます。ヒアリングによって得た情報は、従業員が直面しているリアルな課題や抱えている悩みを把握する重要な手段です。
行動パターンや思考スタイルの分析を通じて、従業員一人ひとりがどのような特徴を持っているのかを理解することができます。これにより、企業は社員それぞれの強みや課題を踏まえて、より適切なサポートや成長機会を提供できるようになります。
あくまで現実にある情報を基準にすることが重要で、理想の社員像を求めすぎると社員像を設定する意味が薄れてしまうので注意が必要です。現実の従業員の声に基づいた情報が重要であり、理想像にこだわりすぎると、実態から離れてしまい社員像の設定が効果を発揮しづらくなります。
フェーズの設定
社員像の設定が終わったら、従業員が企業で体験するさまざまなフェーズを具体的に設定します。フェーズには入社や研修、業務、退職などが含まれます。これにより入社から退職までの各段階で従業員が直面する課題や感情、考えていることを理解し改善点を特定することが可能です。
例えば、入社フェーズでは新しい環境への適応や同僚とのコミュニケーションに関連する課題が生じるかもしれません。研修フェーズでは新しいスキルや知識の習得が求められ、業務フェーズでは業務の効率化や成果達成に向けた課題が発生する可能性があります。
これらの課題や感情、考えをエンプロイージャーニーマップに記載することで、企業は従業員の視点を把握し改善の余地があるかどうかを判断できます。また、エンプロイージャーニーマップは新たな施策やプログラムの導入の際にも役立ちます。
施策を決定
作成したエンプロイージャーニーマップを基準として施策に落とし込んでいきます。従業員に対して自身の成長や評価につながる具体的な行動やプログラムを提供しキャリアアップへの明確な道筋を示すことで、従業員は迷いや不安を軽減することが可能です。
エンプロイージャーニーの設定が重要なのはエンプロイーエクスペリエンスを向上させる手段であるためです。従業員が業務において経験するさまざまなフェーズで、感情や課題を正確に把握することが効果的な施策の立案につながります。
施策を決定するプロセスでは、企業は従業員の立場に立ち求めるものに焦点を当てることが大切です。従業員の声を大切にし期待やニーズに寄り添った形でプログラムを提供することで、エンプロイーエクスペリエンスが向上しやすくなります。
エンプロイージャーニーを効率的に導入するポイント
エンプロイージャーニーを効率的に導入するためには、次のようなポイントがあります。
- 企業のビジョンや目標を具体的にする
- プロセスを明確にする
- 従業員側の意見を優先する
企業のビジョンや目標を具体的にする
エンプロイージャーニーを効率的に導入するためには、明確な企業のビジョンや目標設定が必要です。エンプロイージャーニーは、従業員が入社から離職までの経験を包括的に理解し、そのなかで満足度を向上させることを目指す取り組みです。
企業全体のビジョンや目標に結びつけることで、組織全体が一丸となって従業員の幸福度向上や成長を促進できます。ビジョンと目標の設定によって、エンプロイージャーニーは単なる取り組みではなく企業戦略と一体化し組織全体の成功につなげることが可能です。
従業員側の意見を優先する
従業員の意見や考え方などを大切にすることで、従業員がモチベーションを上げやすく働きがいにつながります。そのため、従業員が今度どのように成長したいのか、それぞれのフェーズにおいて企業にはどのようなサポートをしてほしいのかなどを理解することが重要です。
従業員の希望を把握するにはアンケートやミーティングを通じてコミュニケーションを深め、定期的なフィードバックをおこなう機会を設けることが効果的です。また、従業員の個別のニーズに焦点を当てキャリア開発プランや研修プログラムをカスタマイズすることも重要です。従業員は自身の目標に向かって主体的に取り組みやすくなり、結果として生産性の向上や企業全体の成長につながります。
まとめ
エンプロイージャーニーとは、従業員一人ひとりが企業で勤務するにあたって直面する体験をまとめたものです。エンプロイージャーニーの導入によって従業員満足度を高めることで、企業評価が高まるほか生産性の向上も期待できます。
エンプロイージャーニーは入社から退社までのプロセスにおいて、企業のビジョンや目標のほかに従業員の考え方や感じ方を含めて考慮することが重要です。従業員が組織の方針や文化に共感し自らの価値を発揮できる環境が整うことで、モチベーションが向上し仕事に対する意欲も強まります。