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2023.11.28

AIでなくなる仕事となくならない仕事の特徴

AIの進化は、仕事やビジネスプロセスに深刻な変革をもたらしています。一方で、AIの進化によりなくなる仕事と、変化に強く残る仕事が存在します。まず、ルーティンかつ予測可能な仕事はAIによって置き換えられる可能性が高いといえます。

しかし、一方で人間が持つ感性や創造性、コミュニケーション能力、また資格が必要など、AIがむずかしいとされる仕事も少なくありません。また、AIは新たな仕事や業務の創出も促進しています。例えば、AIの開発や運用、データの解釈や活用など、これまでにないスキルや専門性を要する仕事が増加しています。

AIで仕事がなくなる理由

野村総合研究所は、2015年オックスフォード大学との共同研究で、10〜20年後には日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になると発表しました。

参考:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に(NRI)

AIで仕事がなくなる理由として、AIには次のような特徴があることが挙げられます。

  • ルーティンワークの自動化
  • スピーディーな業務対応
  • 判断力のあるAIの進化

ルーティンワークの自動化

AIで仕事がなくなる理由として、まずルーティンワークの自動化が挙げられます。自動化技術の進歩により、簡単で反復的な業務が効率的かつ正確に処理されるようになり、これによって一部の職種で従来おこなわれていた作業が置き換えられる可能性が生まれます。

例えば、データエントリーやルーティンな判断作業など、AIがこれらの業務を担うことが増えています。これにより、時間とコストの節約が実現される一方で、対象となる仕事の需要が低下する傾向です。

しかし、AIによる自動化は同時に新たな仕事の創出や、人間が得意とする創造性や対人スキルを活かした業務へのシフトももたらしています。AIが担当しにくい、複雑な問題解決やクリエイティブな活動、感情やコミュニケーションに関する仕事は、今後ますます重要性を増すことが見込まれます。

スピーディーな業務対応

AIはスピーディーな業務対応をおこなうことも大きな特徴です。従来の人手による作業では時間がかかるタスクも、AIは高速で効率的にこなすことが可能です。例えば、大量のデータの分析や整理、膨大な情報からの特定のパターンの抽出など、AIは瞬時に膨大な計算をこなし、迅速かつ正確な結果を提供します。

このため、データ分析や整理などこれまで人の手でおこなっていた業務にAIが導入される可能性があります。データ駆動型のビジネス環境では、AIが大量の情報からパターンを抽出し、ビジネス上の価値ある知見を提供することで、迅速で効果的な戦略の策定や経営判断が可能となります。これによって企業は迅速な市場変化に適応し、競争力を維持することが期待されます。

しかし、AIの導入に際しては、データセキュリティや倫理的な観点も重要です。データの正確性やプライバシーの確保、アルゴリズムの透明性などが検討されるべき課題です。従って、AIを適切に統合し、人間との連携を確保することで、効率性と安全性のバランスを取りながら業務を進化させることが求められています。

判断力のあるAIの進化

これまでAIはルーティンワークの自動化が得意だったのですが、最終的な判断は人間がおこなう必要がありました。しかし、近年では判断力のあるAIが進化しており、AIが対応できる仕事の幅が広がっています。

特に機械学習やディープラーニングの進歩により、AIは膨大なデータから学習し、複雑なパターンや相関性を見出す能力が向上しています。これにより、従来は人間に委ねられていた意思決定や判断に関するタスクにおいても、高度な精度で作業できるようになっています。

例えば、金融取引の監視や医療診断など、専門性の高い領域でのAIの適用が進んでいます。AIは大量のデータをリアルタイムで解析し、異常を検知したり、複雑な病状を診断するのに役立っています。これにより、ヒューマンエラーを軽減し迅速で正確な意思決定が可能となっています。

AIでなくなる仕事の例

決められたルーティーンをスピーディーに進めるのはAIの得意分野です。接客やコールセンターなどコミュニケーションが必要であっても、ある程度すべきことが決まっている仕事はAIに置き換えられる可能性があります。

例えば、AIでなくなる仕事として次のようなものがあります。

  • 事務職
  • 店舗の店員

事務職

事務職はAIの進化によって仕事がなくなる可能性が高い職務です。特に、毎月同じ業務をおこなっている場合は、AIがルーティンを覚えることによってAIの導入が進み人間が職を失う可能性があります。

AIはデータの入力や処理、ファイリング、スケジュール管理など、機械学習や自動化技術を活用することで、これらのタスクを効率的にこなすことが可能です。これにより、特定の業務が単純かつ予測可能な場合、AIがこれらの業務を担当し、人間がより複雑で創造的な業務に集中できる環境が整いやすくなります。

店舗の店員

AIの進化により、特に決まったコミュニケーションだけが求められる業務において、その導入が進んでいます。これは、顧客との基本的なやり取りや情報提供が主な業務内容となる場面で見られます。たとえば、ホテルのフロントデスクやコンビニエンスストアなどで、AIが受付業務や商品の説明、決済を担当することで、人手不足や効率の向上が図られています。

一例として、ホテルの自動チェックインシステムやAIが対応するフロントデスクでは、予約の確認や鍵の受け渡しなど、基本的な業務が自動化されています。これにより、滞在者はスムーズにチェックインやチェックアウトをおこなうことができ、スタッフはより重要な業務やサービス提供に集中できるようになります。

AIが普及してもなくならない仕事

ボストンコンサルティンググループは2018年12月にAIアクティブプレイヤーの国別割合を発表しました。中国がずば抜けているほか、ほかの国はほとんど数値に変わりはなく日本は調査国の中でもっとも低い39%に留まっています。

さまざまな理由が考えられますが、AIが普及してもなくならない仕事の存在が要因の1つとして考えられます。

AIアクティブプレイヤーの国別の割合

画像出典:BCG、企業の人工知能(AI)の導入状況に関する各国調査を発表(ボストン コンサルティング グループ)

AIの導入が進んでも、身体や精神などに関連する仕事や法的に資格が必要な仕事はなくなることはありません。また、コミュニケーションや関係性の構築に関わる仕事もAIの普及に関係なく、今後も必要とされることが見込まれます。

AIが普及してもなくならない仕事には、次のようなものが挙げられます。

  • 介護職
  • 保育士
  • 医師
  • 弁護士

介護職

介護職はAIが普及してもなくならない仕事の1つです。なぜなら、介護は感性や人間らしいコミュニケーションが欠かせない職種であり、これらの要素をAIが完全に代替するのはむずかしいためです。介護職は、高齢者や障がい者などの利用者と密接に関わりながら、心身のサポートや安心感の提供をおこないます。人間同士の信頼関係や思いやりが重要であり、これをAIが完全に再現するのはむずかしいとされています。

保育士

保育士は資格が必要なうえ、人間的なコミュニケーションが求められる職務です。保育士の仕事においては、子どもたちとの人間関係構築が非常に重要です。感受性豊かな幼少期において、保育士が子どもたちとコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことは子どもたちの安心感や成長に大きな影響を与えます。保育士は子どもたちの言葉や感情を理解し、適切なサポートを提供するために、人間的な洞察力やコミュニケーションスキルが求められます。

医師

医師になるためには、医師免許が必要でありAIの技術が十分なものであっても人間が職を失うことはありません。この資格は、患者の健康診断や治療、医学的な判断をおこなううえで必須のものであり、人間の専門知識と判断力が求められます。

また、医師は患者との信頼関係を築き、病歴や症状を尋ねることで正確な診断を下す重要な役割がある点が特徴です。治療計画や手術の判断など、高度で複雑な医療判断も医師の専門知識と経験に基づいています。このため、医師業務が完全に自動化されることはありません。

弁護士

弁護士も医師と同じように弁護士資格が必要であるため、AIがすべてを代用することはできません。医師が医師免許を持つように、弁護士も特定のプロセスを経て資格を得る必要があり、これは法的な職務を遂行する上での法的権限を示すものです。

AIの進化が顕著ななかで、弁護士の業務においてもAI技術が一部活用されています。たとえば、契約書の分析や法的文書の検索、過去の判例の調査など、特定のタスクにおいてAIが効果的に利用されています。しかし、法的な助言や個別のケースに対する適切な判断は、法的な専門知識だけでなく、個々のケースにおける複雑な状況やクライアントとの信頼関係も含むため、これを完全にAIが代替することは容易ではありません

AIを導入することで生まれる仕事

AIの導入が進むことで、新たに生まれる仕事があります。特に、次の仕事はAI導入に直結するため、今後さらに需要が高まることが見込まれます。

  • アノテーター
  • AIエンジニア

アノテーター

アノテーターとは、テキストや画像、動画などデータに対してラベルを加えることによって教師データを作成するスタッフのことです。機械学習の元となる知識や判断基準をもとにして、大量のデータにラベルやタグを加える仕事です。アノテーターの仕事ぶりによってAIの品質に影響することから重要な役割を果たします。

アノテーターの仕事は単なるデータのラベリングに留まらず、機械学習モデルの訓練において重要な判断をおこないます。例えば、画像やテキストなどのデータに対して適切なタグを付与するだけでなく、そのデータがどの程度信頼性があるかや、特定のコンセプトが含まれているかどうかを判定する能力が必要です。アノテーターの的確な判断がAIの品質向上につながります。

AIエンジニア

AIエンジニアは、AIの開発に必要な機械学習をおこなうことでAIが稼働するためのシステムを構築する業務を請け負います。そのため、AIの導入を進めるために必要不可欠な仕事です。AIエンジニアの仕事は技術的な側面だけでなく、ビジネス理解や倫理的な側面にも関わります。

クライアントやユーザーとのコミュニケーションが求められ、AIシステムが組織や社会に与える影響を考慮しながら開発を進めることが必要です。エンジニアは単なる技術者以上に、ビジョンと使命感を持ちながら次世代の技術を築き上げることが可能です。

AIと人間が協働する仕事

AIと人間はそれぞれ得意分野、苦手分野が異なります。そのため、今後お互いの長所を活かして協働することが必要です。たとえば、次のような仕事や状況においてAIと人間が協働することが増えています。

  • 介護業界
  • コールセンター
  • 行政・地方自治体

介護業界

介護業界が長らく抱えている人手不足の問題に対処するために、AIの導入が注目されています。さらに、人口の高齢化が進むなか介護ニーズが増加しているため、効率的で質の高いサービス提供が課題となっています。

AIの導入により、例えば、ロボットを活用することで、介護職員の負担を軽減し、作業の効率を向上させることが期待されています。ロボットが重労働や単純な作業を担当し、介護職員はより人間らしいケアや感性的なサポートに専念できるようになります。

また、AIは健康状態のモニタリングや予測分析にも役立ちます。センサーが入居者の動向や生活習慣を把握し、異常が検知された際には迅速に対応できるようになります。これにより、予防的なケアが可能となり、緊急事態の発生を減少させる効果が期待されます。

コールセンター

デロイト トーマツが発表した2023 グローバルコンタクトセンターサーベイの発表によると、日本企業のAI導入は49%と過半数をしめています。しかし、チャットボットやボイスボットにおいて十分な効果を発揮できていないと51%の企業が答えています。つまり、AIは導入したものの使い方に課題を持っている企業が多いことがわかる結果です。

画像引用:デロイト トーマツ調査、日本企業のコンタクトセンター AI導入率が約50%に伸びるも、成果創出には苦戦(デロイト トーマツ)

コールセンター業務が主に繰り返しのタスクで構成されている場合、効率的に処理できるAIが導入される可能性があります。AIはルーティン的な作業や特定の情報提供、基本的な問い合わせに対して素早く正確な応答をおこなうことができ、人的リソースを節約し業務の効率向上が期待されます。

しかし、AIが完全に人間に取って代わるのではなくAIと人間が協働することでより質の高いサービス提供が可能となります。AIが得意な領域での作業を担当し、人間は複雑な問題解決や感情的な対応、クリエイティブな判断など、AIが苦手とする領域で重要な役割を果たします。

この協働により、コールセンターのサポートはより効果的なものとすることが可能です。たとえば、AIが基本的な情報提供やトラブル対応をおこない、人間が複雑な相談やクレームに対応することで、顧客の多様なニーズに対応できる体制が整います。また、AIが学習を進めることで、常に変化する顧客の要望に適応していくことも可能です。

行政・地方自治体

行政や地方自治体においても、AIと人間が協働する仕事が増えています。例えば、行政業務においては、AIが大量のデータを分析し、意思決定プロセスを支援することでより迅速で正確な政策の策定や予算の最適化が可能になっています。

例えば、埼玉県さいたま市では保育所⼊所選考業務を目的としてAIを導入しました。職員が1500時間かけておこなっていた作業を数秒で完結することに成功しました。

参考:AIによる保育所⼊所選考マッチング(総務省)

また、市民サービスの提供においても、AIが自治体のウェブサイトやチャットボットを通じて、市民の疑問や問い合わせに即座に対応する役割を果たしています。これにより、市民は24時間365日、迅速で的確な情報を得ることができ自治体とのコミュニケーションが強化されています。

まとめ

AIの導入が進むことで、ルーティンワークや単純作業、また簡単なコミュニケーションが必要な仕事などがなくなる可能性があります。しかし、人間の判断や経験、法的に資格が必要な仕事などAIが導入してもなくならない仕事があることも事実です。

また、AIの導入によって新たな仕事や役割が生まれます。AIが担当しにくい領域で、人間が持つ柔軟性や創造性、倫理的な判断力が発揮され、高度な付加価値を生み出すことが可能です。

AIがこれまでの業務を補完・支援することで、人間はより質の高い仕事に集中できる環境が整います。AIの導入は業務の変化をもたらしますが、これを機に人間が持つ特性を最大限に活かし、新たな成果を生み出すことが期待されます。

この記事の執筆者

ropro編集局-コラム編集担当

ropro編集局-コラム編集担当

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