就職活動をする場合、応募する企業の業務内容や社内の雰囲気、従業員の評価などさまざまな情報を入手したいと思うことが一般的です。そのため、元従業員の企業に対する評価を知ることができる企業口コミサイトを活用するケースは少なくありません。口コミサイトは求人情報や面接などでは知れないような情報を入手できるため、多くの求職者が利用しています。
しかし、退職した従業員のなかには企業に対して否定的な意見を持っている可能性があります。企業口コミサイトはネガティブバイアス(ネガティブな出来事や言葉に対して過剰に反応することによって記憶に残りやすい傾向のこと)にかかりやすいといった点が特徴です。求職者は、企業口コミサイトをあくまで参考材料として活用し最終的には自分で判断をすることが重要です。
目次
企業口コミサイトとは
企業口コミサイトには、現在就業している従業員や退職した人が匿名で投稿した口コミが書かれています。従業員目線での情報を得られるため、求職者のニーズが高くサイトの数が増えています。
求職者にとって面接や求人情報などでは得られない従業員の体験をもとにした情報を得ることが可能です。実際に、2017年のデータでは転職活動をしている人の約7割が口コミサイトや口コミ検索で企業を調べています。
画像引用:転職活動者の9割が「企業HP」、7割が「採用HP」から企業情報を収集すると回答(en人事のミカタ)
2015年にはアンケートに答えた59%の転職者が口コミサイトや口コミ検索を利用した結果が出ており、2年間で大幅に割合が高くなっています。転職者が口コミサイトや口コミ検索を利用する理由として、次の点が挙げられます。
- 企業のホームページだけでは判断できない
- 働いている人の満足している点や不満な点を把握できる
- 提示条件と実際の待遇や環境に差がないか確認したい
- 社内の雰囲気を知りたい
これらのように求職者は企業のホームページだけでなく、企業口コミサイトを使って企業や就業環境などの情報を得て、求職時の判断材料とすることが一般的です。しかし、企業口コミサイトの情報は必ずしも正しいとはいえず、求職者が利用するにあたってメリットやデメリットがあります。
企業口コミサイトを使うメリット
求職者は就職活動時に企業の評価を知るために、企業口コミサイトを使うことがあります。企業口コミサイトを利用する場合、次のようなメリットが挙げられます。
- 従業員や元従業員の評価を確認できる
- ブラック企業を回避できる
従業員や元従業員の評価を確認できる
企業口コミサイトでは、面談や説明会などでは入手できない従業員や元従業員の企業に対する評価を確認することが可能です。企業口コミサイトを利用することで職場の雰囲気や上下関係があるかどうかなど、求職者が知りたい情報を確認できるため、自分に合う企業であるかどうかを参考にできる場合があります。
実際に昇給しているのか、コミュニケーションをとりやすいのかなど求人情報や面接では聞けないようなことが少なくありません。例えば、求人情報には育児制度を設定していると書かれていても、実際には制度をほとんど利用できない企業もあります。
ブラック企業を回避できる
企業口コミサイトを使って、ブラック企業を回避できる場合があります。たとえば、ある企業で労働環境があまりにも悪いといった口コミが多い場合、その企業はブラック企業である可能性があります。企業によっては求人情報に書かれているような休日を取得できなかったり、労働基準法を守っていなかったりする場合もあり、口コミサイトでそれらを判断することが可能です。
しかし、企業口コミサイトは企業を辞めた人の投稿が主であり、悪い口コミのほうが多いことが一般的です。そのため、企業口コミサイトはあくまで参考程度にして最終的には自分で判断をすることが重要です。求人情報で良い待遇や労働条件が書かれていても、実際に働きやすいとは限りません。そこで、企業口コミサイトを活用することでブラック企業を回避できる場合があります。
企業口コミサイト活用時の注意点
従業員や元従業員の評価を知ることができる企業口コミサイトですが、必ずしもメリットばかりではありません。企業口コミサイトを活用するうえでデメリットも把握しておくことが重要です。企業口コミサイトを活用するには次のような注意点が挙げられます。
- 口コミが正しいとは限らない
- ネガティブな意見が集中しやすい
口コミが正しいとは限らない
口コミの内容は書いている人の主観であるため、企業に対する正しい内容であるとは限りません。さらに、匿名であることから感情的に書かれていることもあります。そのため、口コミが主観的か客観的かを判断をすることが必要です。人間関係がよくない、上司の態度が悪いといった感想は主観的であり、残業時間や報酬額など具体的な数字を記載している場合は客観的であり、信憑性は高まります。
いずれの場合でも口コミが正しいとは限らず、企業口コミサイトに書かれている内容はあくまで参考情報として捉えることが重要です。少数意見か多数意見か整合性を確かめたり、投稿者の雇用形態や部署などを把握したり、投稿者の立場を考えたりすることで口コミを1つの情報として扱いやすくなります。口コミの内容と企業が発表している情報とを比較することも大切です。
ネガティブな意見が集中しやすい
企業口コミサイトは、該当している企業を退職した人が書いていることがほとんどです。退職した人は企業に対して不満を持っている人が多く、ネガティブな意見が集まりがちです。
元従業員や従業員の体験談を把握することで、自分には合わない業務であることや企業の雰囲気が合わないといったことを知る機会となる場合があります。いずれの場合においても企業口コミサイトでのネガティブな意見を鵜呑みにするのではなく、参考材料として活用することが重要です。
ネガティブバイアスによる影響
ネガティブバイアスとは、人はポジティブな情報と比較してネガティブな情報に意識を持ちがちで記憶にも残りやすいということを表した心理学用語です。企業口コミサイトには退職した人の口コミが多いことからネガティブなコメントが多く、閲覧時にはネガティブバイアスに気をつける必要があります。
ネガティブバイアスにより、企業の口コミに次のような影響が出る可能性があります。
- ポジティブ面を打ち消すことがある
- 続けて起きやすい
ポジティブ面を打ち消すことがある
人はポジティブな記憶よりもネガティブな記憶の方が残りやすいといった傾向があります。実際には従業員からの評判が良い企業でも、ネガティブな口コミが多いことからポジティブな要素が求職者の記憶に残らない可能性があります。
ネガティブな口コミを見てもすぐに鵜呑みにするのではなく、その口コミが客観的であるか主観的であるか、同じような口コミがあるかどうかなど口コミを判断材料の1つにすることが重要です。さらに、企業が公式で公表している求人情報や業務内容などと比較をしながら最終的に求職者が自分に合う企業であるかどうかを判断することが求められます。
続けて起きやすい
ネガティブバイアスは連鎖反応を起こすことによって続けて発生しやすい特徴があります。ネガティブバイアスが続くのは、ほかの人によるネガティブな評価に影響されてしまい、投稿者の評価も自然とネガティブに偏ることが連鎖反応を起こす原因です。
同じ内容で複数の口コミが続いた場合でも必ずしも正しい内容であるとは限りません。ネガティブな口コミが続いた場合でも鵜呑みにするのではなく客観的に判断することが重要です。
ネガティブバイアスに対する対策法
求職者が企業口コミサイトを活用するにあたり、ネガティブバイアスに注意することが必要です。ネガティブバイアスに対して次のような対策方法が挙げられます。
- 複数の情報を確認する
- 客観的に判断する
- ネガティブな情報を過剰に評価しない
- 投稿時期や投稿数を確認する
複数の情報を確認する
企業の口コミサイトは書き込んだ人が正しい情報を投稿しているかどうかわからない点が特徴です。そのため、求職者は同じ企業に関するほかの口コミも確認する必要があります。同様の意見が多ければ、より真実に近づく可能性があるからです。
また、同じ発言者の過去の投稿も確認してください。あまりにもネガティブな意見であったり、攻撃的な書き方が多かったりする場合は、感情的になっていることから事実とかけ離れている内容を投稿している可能性があります。企業口コミサイトは、1つの口コミにとらわれすぎないことが重要です。
客観的に判断する
求職者がネガティブバイアスに影響されないようにするためにも、客観的に判断することが重要です。投稿者が感情的なコメントをしていたり、間違った情報を投稿したりしていてもなかなか削除されないことはよくあります。
企業の公式ホームページや公式SNS、新聞などといった信頼できる情報源などを参考にすることも、正確に企業を評価するために効果的です。
ネガティブな情報を過剰に評価しない
ネガティブな情報を過剰に評価することによって、ポジティブな情報を打ち消してしまう可能性があります。企業口コミサイトでは、個人的な不満が強調されてしまい、歪んだ評価をしてしまうことが少なくありません。投稿者が不満を抱えている場合には、正確な内容でない場合もあります。
このため、企業口コミサイトに記載されているネガティブな情報はあくまで参考程度に活用することが重要です。また、企業が公式で提供している情報を照らし合わせることも必要となります。
投稿時期や投稿数を確認する
口コミが投稿された時期が古すぎる場合、状況が大幅に変更になっている可能性があります。そのため、投稿時期は確認をすることが重要です。なかには5年以上前の口コミが投稿されていることがあります。
また、1つの企業に対して口コミ数が少なすぎる場合にも注意が必要です。口コミが少ないと、口コミの内容が正しい評価であるのか判断できません。
まとめ
求職者は企業口コミサイトを活用することで、面談や説明会などでは得られないような生の声を聞くことが可能です。しかし、口コミサイトは辞めた人の意見が多く、ネガティブな口コミの内容が多いことからネガティブバイアスの影響があることに注意が必要です。
ネガティブバイアスへの対策方法として、複数の情報を確認することで客観的に企業に対する評価を判断することが重要です。さらに、ネガティブな情報を過剰に評価しないことで、より公正に企業の評価をしやすくなります。