終身雇用が減りつつある現代において、キャリアアップや環境の変化などさまざま理由で転職をするケースが増えています。しかし、必ずしも転職をすることで環境が良くなるわけではありません。場合によっては、転職によって現職よりも環境が悪くなる場合もあります。このような状況にならないように、転職しないほうが良い場合や転職すべきでないタイミングを把握しておくことが重要です。
目次
転職を考える前に
転職を成功させるためには適切な準備が不可欠であり、自身の強みや弱み、キャリアプランを明確にすることで、どのような職場や役割が自分に適しているかを把握することが必要です。
転職を考える前に、現職での可能性を十分に探ることも重要です。スキルアップを図ることで新しい職種への挑戦や異動の機会が生まれることがあり、上司や人事部門との対話を通じてキャリアプランについて話し合うことで、現職での成長の機会を見出すことができるかもしれません。
現職で解決できないか考える
転職を考える前に現職で解決できないか考えることが大切です。特に、現職に対して不満を持っていることから転職を考えた場合は、まず現職での解決策を探ることが必要です。
転職をしても転職先の企業で同じ悩みを抱えるケースは十分にあります。むしろ現職で異動願いを出すことで働く環境や人間関係を変えたほうが、問題を改善できる可能性があるかもしれません。現職では希望している環境や働き方、待遇などが得られない場合にはじめて転職を考えても遅くはありません。
現職での問題解決を試みる場合には上司や人事担当者との対話を通じて、自分の悩みや希望を率直に伝え改善ができるかどうかを探ることが大切です。また、社内研修や外部セミナーへの参加を通じて自己成長の機会を見出し、自分の強みを活かせる業務への異動や新しいプロジェクトへの参加を検討することも有効です。
現在の職場環境を再評価する
転職を考える前に現在の職場環境についてもう一度見直してください。業務内容や職場の雰囲気、企業の将来性、給与や福利厚生などを把握したうえで、転職を考えている他社と比較することが重要です。
現在の職場環境をよく分析することで、同じ業務でも予想以上に待遇や環境が恵まれていると判断できる場合があります。また、福利厚生や教育制度、昇進の機会なども総合的に評価することが重要です。転職先との比較では、これらの要素を細かく検討し、本当に待遇や環境が改善されるのかを慎重に確認すべきです。
転職は大きな決断であるため、焦らずに十分な時間をかけて情報収集し現在の職場と転職先のメリットやデメリットを客観的に比較検討することが重要です。場合によっては、現在の職場での改善ができるかどうかを上司や人事部門と相談することも1つの方法だといえます。
キャリアプランの見直しをする
転職をするかどうか迷った時は自分のキャリアを見直して、現職で達成できるのかを確認することが重要です。自身が求めているキャリアと現職での業務内容、職場環境を比較した際に、ギャップが大きすぎる場合は転職が必要になる場合があります。
しかし、明確なキャリアプランがない場合や現職でもキャリアプランを達成できる場合には転職は不要です。現職でキャリアプランの見直しを探る際は、上司や人事部門との率直な対話が有効であり、自身のキャリアプランや希望を伝え、会社側の期待や提供できる機会について話し合うことで現職において成長の可能性を見出せるかもしれません。
転職しない方が良い場合
次のような状況においては、転職しない方が良い場合があるためよく考えることが大切です。
- 人間関係に不満がある場合
- 業務内容に不満がある場合
- 転職理由が不明確な場合
- 給与に不満がある場合
- 現職の待遇が良い場合
- 配置換えで解決できる場合
- スキルや経験が不足している場合
人間関係に不満がある場合
転職をしたい理由として、人間関係での悩みを挙げるケースがよく見られます。しかし、仕事内容や待遇などに問題がなければ、人間関係で転職するのがもったいない場合もあります。
どの職場におこなっても合わない人は存在しており、転職したからといって人間関係が解決するとは限りません。また、現職においても異動によって人間関係の問題が解消する場合もあります。人間関係の不満となる原因が自分にある可能性もあります。自分を見つめ直す、相手を気にしすぎないなど、自分の考え方や行動を変えてみることも大切です。
業務内容に不満がある場合
業務内容が不満で転職を考えるケースもよく見られますが、転職を思いとどまるべきケースもあります。上司に相談をして業務内容を変えてもらえる場合があるほか、自分の意識次第で業務への取り組み方が変わることがあります。
また、今の業務が嫌だといった理由で転職をしても、新しい職場でも同じような状況になることも少なくありません。今の業務に対して自分を客観的に見つめ直して、それでも不満に感じる場合は上司に相談することが必要です。
転職理由が不明確な場合
転職理由が不明確なまま転職をしようとしても、面接で伝わってしまい不採用になることや転職に成功しても以前の職場のほうが良かったと思いなおすことも考えられます。転職を考える際は、転職をして自分は何をしたいのかを明確にすることが重要です。目的をはっきりとさせた結果、現職に残って経験を積んだ方がいいと判断する場合もあります。
給与に不満がある場合
給与は従業員のモチベーションに直結するため、不満があると転職を考えがちです。しかし、転職をしてもかえって待遇が悪くなる場合や収入が良くても職場環境が悪い場合などさまざまな可能性があるので注意が必要です。
給与に不満があるのであれば現職での企業が求めている資格をとったり、ほかの部署への異動願いを出したりなど、転職をしなくてもさまざまな対処方法があります。いきなり転職を考えるのではなく、まずは社内で出来る方法を考えることが大切です。
現職の待遇が良い場合
現職の待遇が良い、または待遇に満足している場合は転職をすると後悔することがあります。転職を考える場合、現職と同待遇、もしくはさらによい待遇であるかどうかを把握することが重要です。もし、転職を考えている企業の待遇が現職よりも悪い場合は転職をふみとどまらないと後悔するかもしれません。
配置換えで解決できる場合
現在は課題を抱えていても解決できるかどうかを考えて行動することが大切です。解決をできない場合は、上司に相談して部署や職種を変更する配置換えをする方法があります。
配置換えであれば転職の手続きが不要で、福利厚生に変更はありません。また、転職と比べて異動先の部署の様子や業務内容などを把握することが可能です。環境を変えてほかの業務に挑戦したいと考えている場合、社内での配置換えは1つの方法です。
スキルや経験が不足している場合
転職に必要なスキルや経験が不足している場合も転職すべきタイミングとはいえません。転職してからスキルアップを目指す方法もありますが、新卒採用と違い転職は即戦力が求められていることが一般的です。
そのため、転職をしたいと考えている企業や業務に必要なスキルや経験を積んでから転職をするべきです。転職活動を始める前に、自己分析をおこなってこれまでの経験を洗い出し、どのようなスキルが身についているのかを明らかにすることが重要です。
転職のタイミングを見極める
転職には適切なタイミングと避けるべきタイミングがあります。成長の機会がないと感じたときや求人が増える2〜3月、8〜9月は転職に適しています。一方、早期退職や貯蓄が不足している状態での転職は避けるべきです。転職活動には費用がかかり、収入が途絶える期間もあるため、慎重な判断が重要です。
適切な転職タイミング
転職するタイミングは人によって異なりますが、主に次の2つが挙げられます。
- 成長する機会がないと感じたタイミング
- 求人が増えるタイミング
H4:成長する機会がないと感じたタイミング
自身のキャリアプランを考えて成長する機会がないと判断した場合は、転職するタイミングです。同業界でキャリアアップを目指したり異業種にチャレンジをしたりなど、さまざまな可能性があります。
現在勤めている企業では昇進や新しいチャレンジの機会がない場合、また他の現場にかかわりながら経験を積みたいといった場合などは、転職を考えるべき時かもしれません。
H4:求人が増えるタイミング
企業によって異なりますが、一般的に半期の切り替えをおこなう4月と10月の前2か月である2〜3月、8〜9月は求人が増えるタイミングです。人事異動が発生することが多く、人員補填が必要となることがあります。
半期の切り替え前は普段見ない求人情報が出ることもあり、希望の求人が見つかる可能性が高まります。また、採用枠が広まっていることもあるため、転職しやすい時期です。
避けるべき転職タイミング
転職を考えるにあたって、次のタイミングは一般的に避けるべきだといわれています。
- 早期退職のタイミング
- まとまった貯蓄のないタイミング
H4:早期退職
一般的に早期退職は正当な理由がない限りどの企業においても求職者の評価を落とす要因です。転職先の企業にとって、また早期退職してしまうのではないかといった懸念点になります。
企業が人材を採用するためには時間や手間、コストが必要になります。そのため、早期退職は現在勤めている企業や転職先の企業に対して、悪い印象を与えるので基本的には避けるべきです。
H4:まとまった貯蓄のないタイミング
現職を退職してから転職先に入社して給与が入ってくるまで、収入が入らない状態です。普段の生活費以外に、交通費をはじめとして転職活動をするための費用がかかり、転職がなかなか決まらないとだんだんと焦ることになってしまいます。
現職で働きながら転職活動をする方法もありますが、それでも転職活動には費用がかかるため、貯蓄に余裕のない時は緊急な場合以外は転職を避けるべきです。
転職するかどうか迷った場合にできること
転職するかどうか判断がむずかしい場合、次のような対処方法があります。
- 転職エージェントを活用する
- 転職口コミサイトを活用する
転職エージェントを活用する
転職エージェントを活用して経験やスキル、現在取り組んでいる業務内容などを基に転職するべきか相談することが可能です。また、市場価値を知れるため自身のスキルや経験に対して、適正な評価をされているかどうかがわかります。周りと比べて給与が安いと考えていても、実際には給与や待遇面で恵まれていると感じることがあります。
転職エージェントは面談でスキルを適正に判断し、強みや弱みを整理してくれることが特徴です。さらに、自分では気づかない異なる分野での適性や可能性を引き出してくれることもあります。
転職口コミサイトを活用する
転職を考えた場合、それぞれの企業において現社員や退職した社員の企業に対する評価が書かれています。転職口コミサイトも1つの判断材料です。リアルな給料や職場環境、企業の将来性などを確認したうえで転職するかどうかを判断することが可能です。
転職口コミサイトの情報を鵜呑みにするのは避けるべきであり、口コミには良い評価と悪い評価のバランスを見ることが重要です。また、投稿者の個人的な主観によるものであるため、参考程度にとどめることが必要です。
まとめ
近年では転職は決して珍しいわけではなく、キャリアアップや新しい環境などさまざまなメリットがあります。しかし、必ずしも転職すればいいわけではなく、転職することでかえって環境が悪くなったり、給与や待遇が悪くなったりする可能性があります。
また、転職をしても現在の課題を解決できない場合もあるため、転職をする前に目的を明確にすることが必要です。自身のこれまでの経験やスキル、現職の環境などを分析した結果、現職で続けて勤めた方が良いと判断できる場合もあります。転職は働く環境や業務内容、人間関係などが大幅に変わることから、十分考えてから進めることが大切です。
