多様な働き方や終身雇用の崩壊によって転職は個々のキャリアアップにおいて一般的な選択肢となりつつあります。転職をする理由としては、仕事内容や人間関係、評価などに納得がいかない場合やよりキャリアアップを目指している場合などが挙げられます。
希望の転職先がある、現在の職場で課題を解決できないなどのタイミングで転職をする場合が一般的ですが注意点もあります。転職を成功させるためには、十分に準備をして適切なタイミングでおこなうことが重要です。
目次
転職のきっかけとなる理由
令和2年厚生労働省の調べによると、自己都合による離職理由のうち「労働条件がよくない」が28.2%ともっとも高くなっており、次に「満足のいく仕事内容でない」が26.0%、「賃金が低い」が23.8%と続きます。
これらのデータから明らかなように、従業員は適切な労働条件や自分に合った仕事内容、そして適正な報酬を求めていることがわかります。
仕事内容が合わない
自分のスキルを活かせない、立てたキャリアプランを達成できないなど現在の仕事内容が合わない場合があります。このようなケースは、転職することで自分のスキルや経験を活かせるような職務に就ける可能性があります。
新しい職場で自分の強みを活かすことで仕事に対するモチベーションも向上し、充実感を得ることが可能です。転職は個人の成長や仕事への満足度を追求する手段として、ポジティブな変化をもたらすことがあります。
また、新しい環境では新たなスキルや知識を習得できる機会も広がることが可能です。自分の専門性を深めつつ、新たなチャレンジとなるプロジェクトに参加することで成長の機会が増え、キャリアに新たな可能性を見つける機会になります。転職は自分の価値観や目標に合致する職場を見つけ、充実感ある職務に就く一歩となり得ます。
人間関係に悩んでいる
上司や同僚との人間関係が原因で転職を考える場合も少なくありません。どのような努力をしてもどうしても相性が合わず、業務に支障が出るとストレスがたまる原因になります。そこで、良好な人間関係を築くことが転職をする目的の1つとして挙げられます。
新しい環境では、前向きなコミュニケーションや協力体制が築かれることで、仕事の効率やモチベーションが向上することが期待されます。また、仕事仲間との協力関係は仕事を楽しく充実したものにする一因となり、職場全体の雰囲気にもプラスの影響を与えます。
転職を通じて自分にとって理想的なチームや組織に出会い、人間関係の改善が実現されることで仕事におけるストレスを軽減し、キャリアをより良い方向に導くことが可能です。良好な人間関係は職場環境の魅力を高め、仕事を通じての成長や達成感をより一層引き出す要素となります。
納得のいく評価ではない
従業員がおこなっている業務内容や業績への貢献度などが、給与や評価に反映していないことは転職を考えるきっかけの1つです。給与や評価が実力や成果に見合っていないと感じると、モチベーションの低下や不満が生じます。
転職を検討する際には、給与や評価制度が明確で公正なものであるかを確認することが大切です。自分のスキルや成果が正当に評価され、報酬にフェアに反映される職場であれば、仕事に対するモチベーションが高まり、キャリアアップさせることが期待できます。
キャリアアップをしたい
経験を積んでスキルアップをすると、キャリアアップを考えることが一般的です。現在勤めている企業でキャリアアップのチャンスがないと判断すると、転職を考えるケースが増えています。
現在の職場での成果や取り組みが適切に評価されず、昇進や新たな挑戦の機会が限られている場合、新しい職場でのステップアップが期待できる可能性が高まります。他方で、転職を通じて異なる業界や職種に挑戦することで、多岐にわたるスキルを磨くチャンスも広がります。
転職にはリスクも伴いますが、新しい環境での学びと成長は、キャリアに新たな活力をもたらすことがあります。キャリアアップを追求する意欲が高い人々にとって、転職は新たな可能性を広げる手段の1つです。
生活環境が変わった
結婚や出産などによって生活環境が変わったことで転職をする場合もあります。結婚や出産などのライフイベントが生じると、仕事における価値観や優先順位が変わり、新しい生活スタイルに合った職場を求めることがあります。
例えば、仕事と家庭の両立を重視するためには、柔軟な労働条件や育児支援制度の整った企業を選びたいと考えることが普通です。また、住環境や通勤時間の変化によって、転職先の勤務地が重要な要素となります。
新しいライフステージでは、キャリアにおいても新たな目標が見つかることがあります。これに合わせて、働く環境や雰囲気に適応できる転職先を見つけることで仕事と生活のバランスを取りやすくなります。転職を通じて変化した生活環境に合った仕事を見つけることで、仕事とプライベートのバランスがよくなり充実感や幸福度が向上することが期待できます。
年代別の転職を考えるきっかけ
年代によって転職を考えるきっかけは異なります。若い世代では新しい挑戦や成長の機会が重要である一方、中年世代では安定性やキャリアの充実感が重視されることがあります。
20代
20代が転職を考えるきっかけは、主に新しい挑戦や成長の機会が挙げられます。この年代の従業員は自らの可能性を広げ、さまざまなスキルを身につけることで将来的なキャリアアップにつなげたいと考える傾向にあります。企業や業界の変化に柔軟に対応し多岐にわたる経験を積むことで、将来的なキャリアの選択肢を豊かにしたり自分の専門性を高めるために転職を検討することがあります。
30代
主にキャリアの中盤に位置する30代が転職を考えるきっかけは、多岐にわたります。この年代では、職務への不満や将来への不安、さらなる成長の追求などが影響を与えます。例えば、現職での仕事に対するモチベーションの低下や、スキルの停滞感を感じた場合、新しい環境での仕事を通じて新たなスキルを身につけたり、モチベーションを高めたりするために転職を検討することがあります。
また、30代は家庭を持つことが多くなり、家族の生活維持や教育費、住宅ローンなどに関する負担も大きくなります。このため、安定性や収入の向上を求めて転職を考えることもあります。さらに、将来のキャリアの方向性や充実感を追求するために、新しい職場でのチャレンジを希望することも挙げられます。
40代
40代が転職を考えるきっかけにはさまざまな要因が絡んできます。この年代では、職務経験が豊富でありながら、将来のキャリアに対する方向性や満足度の向上を模索することが一般的です。1つのきっかけは、仕事に対するモチベーションの低下や職場でのストレスの蓄積です。これにより、新しい職場での環境や仕事内容の変化を求めて転職を検討することがあります。また、40代になると子育てがひと段落し、家庭における負担が減少することもあり、その余裕を活かして新たな挑戦に向かうケースも見られます。
さらに、40代はキャリアのなかでもリーダーシップや経営的な視点が求められる時期であり、管理職やリーダーとしてのステップアップを果たすために転職を考えることもあります。40代の転職は、これまでの経験を活かしつつ、新しい可能性や挑戦を求める大きな転換点となります。自分自身のキャリアのなかでの位置づけや将来の展望を見つめなおし、新たなステージに進むための戦略的な動きが求められます。
転職をするタイミング
転職をするタイミングは目的や状況などによって異なります。次のようなタイミングで転職を検討するケースが一般的です。
- 転職したい求人がある
- 解決をしようとしても変化がなかった
- 資格を取得した
転職したい求人がある
転職を検討する際、自分が希望する求人があることが1つのきっかけとなります。求人には、やりたい仕事や興味を持っている業界、キャリアアップの機会が含まれます。これによって、現職と比較して新しい環境での挑戦が魅力的に感じられ、転職の意欲が高まることがあります。
また、求人が提供する給与や福利厚生、働きやすい環境などが自分の希望に合致しているかどうかも考慮材料となります。これが転職を決断する大きな要素となり、新しい職場での生活や仕事への満足度に繋がることが期待されます。求人情報を通じて、自分のキャリアにおいて新たな可能性を見出し、成長の機会を追求することが転職の動機となります。
解決をしようとしても変化がなかった
業務内容や人間関係など長期間解決をできない問題を抱えている場合、問題解決を目的として転職するケースがあります。労働環境の改善がむずかしい場合やキャリアの発展が見込めない場合、または人間関係のトラブルが続くなど、現状を打破するための手段として転職を選択することがあります。
新しい職場では、これらの問題を解決する可能性が広がります。例えば、前職で得た経験を活かせるポジションや、柔軟な労働環境を提供する企業などが挙げられます。新たな環境でのスタートにより、前向きな変化が生まれ、仕事へのモチベーションが向上することが期待されます。
転職によって問題が解決され、新しい職場での仕事をより充実させることが可能です。自分の価値を正当に評価され、成長の機会が提供される環境で働くことで、仕事においても満足度が向上し、キャリアの展望が広がることが期待できます。
資格を取得した
仕事のスキルアップにつながるような資格を取得した場合は、転職するチャンスです。適切な資格を取得することで、自分のスキルを向上させ、求められる専門知識を身につけることが可能です。これにより、他の職場や業界での新たなチャンスが広がります。
資格取得は職場での価値を高めつつ、自分のキャリアの可能性を最大限に引き出すことが可能です。適切な資格を追求することで未知の領域に挑戦できる可能性があります。
転職での注意点
転職をするうえで次のような注意点を把握しておくことが重要です。
- 問題が解決しない場合がある
- 評価が下がる場合がある
- ネガティブなことは伝えない
問題が解決しない場合がある
転職をしても問題が解決しない場合があります。転職を検討する際は、問題の原因を明確にし、それに対する解決策を検討することが大切です。まず、転職を考える理由が仕事に関連する問題である場合、新しい職場でも同じ課題が再現される可能性があります。そのため、転職前に現職での不満点や改善すべき点を具体的に洗い出し、問題解決に向けた対応をすることが重要です。
また、職場以外にも生活環境や人間関係、個人のキャリア目標などさまざまな要因が影響を与えることがあります。問題が単に仕事に関連するものではない場合、転職だけでは根本的な解決がむずかしいかもしれません。全体の状況を客観的に見つめ直すことで、より効果的な対策が見つかることがあります。
評価が下がる場合がある
転職をすることで評価が下がる場合があります。新しい職場では、自分の実力や経験が適切に評価されず、初めての環境に順応するなかで業績が十分に発揮されないことがあります。これにより、転職前の評価やポジションよりも低い水準で評価されることがあるため、慎重に転職を進める必要があります。
特に異なる業種や業界に移る場合、新しい環境に適応するまでに時間がかかり、最初は能力や貢献度が適切に認識されないことがあります。そのため、転職を考える際には、新しい環境においても十分な評価が期待できるかを検討することが大切です。
ネガティブなことは伝えない
転職の理由を上司に伝えるときに、ネガティブなことは伝えないことが重要です。ネガティブな要素を強調すると企業内での関係が悪化する可能性があります。新しい職場での成長機会や挑戦に魅力を感じている、スキルや経験を活かせる場があるなどポジティブな要素を転職理由として上司に伝えることが重要です。
転職をするメリット
近年では1つの企業で定年まで就業する終身雇用制は崩壊しつつあります。また、転職は決してネガティブなわけではなく、次のように前向きな理由も多くあります。
- キャリアアップ
- 年収アップ
キャリアアップ
現職では今後取り組みたい職務を経験できなくても、転職によって達成できる場合がありキャリアアップにつなげることが可能です。新しい職場では、異なる業界や専門分野でのスキルや知識を身につけるチャンスが広がります。
また、異なる企業文化や仕事のスタイルを経験することで、自身の成長につなげられます。転職は自分の強みや経験を活かし、新しい挑戦に臨む良い機会です。
年収アップ
現職よりも転職することで高く評価され、年収アップにつながる可能性があります。業界や職種によっては、需要の高いスキルや経験を持っていることが年収アップにつながることがあります。そのため、転職を機に自分の強みを再評価し、それを的確に伝えることが重要です。
まとめ
終身雇用制度が崩壊しつつあり、働き方が多様化した現在の日本において転職をすることは珍しくありません。組織の変化や新しい挑戦に対応するために、転職を通じて新しい環境でのスキル向上や成果を追求することが、多くの従業員にとってキャリアパスを形成するうえで選択の1つとなっています。
労働環境や条件、仕事内容などに納得がいかない場合、これまでの経験を活かしてさらにキャリアアップをしたいなど転職をするきっかけにはさまざまな理由が挙げられます。