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2023.09.16

ブラック企業の割合はどの程度なのか?思った以上に高い法令違反率

ブラック企業の割合は具体的に公表されているわけではありません。しかし、厚生労働省が発表している定期監督等の実施結果データを通じて、時間外労働を強制したり従業員の安全対策を怠ったりしている企業が多いことが明らかになっています。2021年のデータでは、71.5%の企業に対して改善指導を実施している状況です。

さらに、違法な時間外労働があった企業は全体の15%でありブラック企業の存在や労働環境の問題を理解するうえでの1つの目安となっています。これらの報告をもとに、ブラック企業の存在や労働環境の問題を把握し、さまざまな対策が進められています。

ブラック企業の割合

ブラック企業には明確な定義がありません。しかし、労働基準監督署がおこなっている立入検査における法令違反の件数と内容である程度、ブラック企業の割合は判断できます。2021年の定期監督等の実施結果によると、実施した10130社のうち、7245社にあたる71.5%の企業が法違反の改善指導をされている結果です。

この数字から法令違反に問題を抱える企業が相当数存在し、ブラック企業の一環である可能性が考えられます。ブラック企業とは、労働法や労働基準に違反し、労働者の権利や健康を軽視する企業を指すことが一般的です。労働環境の改善や法令遵守は、健全な労働文化を築くために不可欠な要素です。

厚生労働省のデータ

厚生労働省では毎年発表している労働基準監督年報で、労働基準監督署がおこなっている立入検査における法令違反の件数と内容を確認できます。2022年12月5日に発表した2021年の定期監督等の実施結果では、実施した10,130社に対して71.5%にあたる企業に法違反の改善指導をする結果となりました。

定期監督などの実施事業場数

10130

機械や設備などの危険防止措置に関する安全基準に関する違反

2882(22.5%)

違法な時間外労働があったもの

1521(15.0%)

健康診断の実施に関する違反があったもの

1417(14.0%)

参考:東京都内の労働基準監督署における令和3年の定期監督等の実施結果(厚生労働省東京労働局)

さらに、違法な時間外労働があった企業は1521社を超えており全体の15.0%にあたります。これらのデータは労働環境の違法性や改善の必要性を示すものであり、必ずしも法令違反をしている企業がブラック企業にあたるとは一概にはいえません。

しかし、労働基準法を順守し労働者の権利を守ることが大切であり、これらのデータは一つの目安として、労働環境の健全さを評価する際の参考にすることが可能です。

違反の多い業種

違反が目立つ業種として、建設業や商業、製造業などが挙げられます。特に建設業では、5296件の調査対象中、3647社(68.9%)で違反が確認されました。商業業界では1250件の調査で944社(75.5%)、製造業では628件の調査で510社(81.2%)が違反を犯していることが明らかになっています。

これらの業種は、労働環境が厳しいことや労働基準を満たしにくい側面があるため、違反が顕著となっている可能性があります。監督機関や企業自身が、これらの業種における法令遵守の取り組みを強化することが求められます。

定期監督等実施事業乗数

画像引用:東京都内の労働基準監督署における令和3年の定期監督等の実施結果(厚生労働省東京労働局)

違反率が高い項目

労働基準監督年報で発表された違反のうち、違反率が特に高いのが次の項目です。

  • 安全基準に関する違反
  • 違法な時間外労働
  • 健康診断の実施に関する違反

安全基準に関する違反

もっとも違反率が高い項目は安全基準に関する違反で、2022年度は10130社中22.5%です。ほぼ4分の1にあたる企業が安全基準の項目で違反していることになります。安全基準は労働安全衛生法の第20〜25条に記載されている、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関連する内容です。このような違反が多い状況を改善するためには、企業が安全基準の遵守を強化することが不可欠です。

(事業者の講ずべき措置等)

第二十条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険

二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険

三 電気、熱その他のエネルギーによる危険

引用:労働安全衛生法

違法な時間外労働

次に違法な時間外労働が10130社中1521社で15%といった結果です。長時間労働に関しては、労働基準法の第32条では1日の労働時間の上限が、第40条では1週間あたりの労働時間の上限が定められています。これらの法律を守ることは、労働者の健康と働きやすさを守るために極めて重要です。違法な時間外労働を削減し、適切な労働環境を確保するためには、企業が労働基準法を遵守することが欠かせません。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法

健康診断の実施に関する違反

健康診断の実施に関する違反も問題とされており、10130社中1417社がこれに関連して違反していることが判明しました。この数字は全体の14.0%に相当します。要するに、約7社に1社が従業員の健康診断を怠っている状況です。健康診断は労働者の健康管理や早期発見に役立つ重要な措置であり、これを怠ることは労働者の健康と企業の健全な運営に影響を及ぼす可能性があります。

健康診断の実施に関する規定は労働安全衛生法第66条に記載されており、従業員の健康を守るためにも遵守が求められます。企業は労働法令を遵守し、健康診断の実施をきちんとおこなうことが大切です。

(健康診断)

第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

引用:安全衛生法

ブラック企業割合の向上に対する政府の取り組み

政府はブラック企業割合の向上に対して次のような取り組みをしています。

  • ブラック企業リストを公開
  • 相談窓口の設定
  • 長時間労働削減推進本部の設置

ブラック企業リストを公開

厚生労働省では労働基準関係法令違反に係る公表事案を定期的に公開しています。実際の摘発事例や企業名、住所なども公表され、これにより一般の人々や労働者は、ブラック企業の実態を把握しやすくなっていることが特徴です。

これらの公表は、企業にとって良いイメージの維持や適切な労働条件の提供が重要であることを示す一方、労働者たちの権利保護にも一役かっています。公表された情報は社会的な監視の一翼を担い、ブラック企業の割合削減に向けた意識を高めることも目的の1つです。

相談窓口の設定

労働者が無料で相談できる窓口である労働条件相談ほっとラインを提供しています。賃金未払いや不当な長時間労働など、労働者のあらゆる悩みを電話で相談することが可能です。さらに、労働基準監督署の専門スタッフが対応し、労働法や労働基準に関するアドバイスを提供します。平日の夜間や土日祝も受付をしているので、日中働いている人でも安心です。

突然のトラブルや悩み事が生じた場合でも、ほっとラインの存在があり、いつでも助けを得る手段が確保されています。

労働者の権利保護や労働条件の向上は、健全な社会の構築に欠かせない重要な要素です。ほっとラインは、労働者が適切な労働環境を享受できるようサポートし、問題解決に貢献しています。もし労働に関する疑問や悩みがある場合、ほっとラインを活用して自身の権利を守ることが可能です。

長時間労働削減推進本部の設置

日本では過度な長時間労働が問題となっています。厚生労働省では、過度な長時間労働の問題を解決するために長時間労働削減推進本部の設置を設置しました。

我が国においては依然として長時間労働が問題となっており、長時間労働の削減は喫緊の課題です。これに取り組むため、「働き方の見直し」に向けた企業への働きかけや、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の徹底等を行っています。

引用:長時間労働削減に向けた取組(厚生労働省)

長時間労働削減推進本部では、労働時間の適正化やワークライフバランスの向上を図り労働者の健康と働き方を守るためにさまざまな取り組みをおこなっています。具体的には、企業への働き方改革の働きかけや、労働時間の把握と適正化の支援などが挙げられます。過労による健康被害の予防や労働環境の改善を目指す一環として、長時間労働の是正に取り組むことが目的です。

まとめ

労働基準監督署が立入検査における法令違反の件数を発表しています。2021年の定期監督等の実施結果では、実施企業のうち71.5%の企業が法違反の改善指導をされていることがわかっています。7割以上の企業が法令違反をしてブラック企業の可能性がある結果です。労働者の権利や健康を害し、健全な労働環境を損なうことにつながります。企業は法令遵守を徹底し、社会的責任を果たすことが求められます。

この記事の執筆者

ropro編集局-コラム編集担当

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ropro編集局は、企業に関する正確かつ客観的な情報をお届けするため、求職者に役立つコラムを提供しています。採用や就職に関するトピックを専門に扱い、皆さまのキャリア形成をサポートします。

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