ウェルビーイング(Well-being)とは、wellとbeingを重ねた言葉で幸福や健康を意味します。世界保健機構(WHO)では、人々の健康状態だけでなく社会的、経済的、環境的といったさまざまな面において個人や社会が良い状態であることと説明しています。
企業において、ウェルビーイングを重視することは従業員の生活の質を向上させる重要なステップです。ウェルビーイングの促進は、生産性の向上やストレスの軽減、幸福感の増加など、多くの利点をもたらす可能性があります。
目次
ウェルビーイングの解説
ウェルビーイング(Well-being)とは、メンタルや身体、経済、社会面などさまざまな分野において人々が満たされている状態です。具体的には、身体的な健康、精神的な幸福感、経済的な安定、社会的な関係がバランスよく調和していることを意味します。
日本WHO協会によれば、ウェルビーイングに関する概念は、体調面や精神面だけでなく、社会的な側面も含まれています。つまり、体の健康だけでなく、心の健康も重要であり、さらには社会的なつながりや結びつきも考慮されています。
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
ウェルビーイングの需要が高まった理由として、次の2点が挙げられます。
- 健康経営
- ニーズの移り変わり
経済産業省では健康経営を企業に推奨しています。健康経営とは経営的な視点で健康管理をとらえて、従業員の健康を維持する動きをすることです。健康経営をすることで業績や生産性の向上につながることを期待しています。
また、人々のニーズの移り変わりもウェルビーイングが注目される理由の1つです。長く日本では売り上げや利益などといった経済指標を優先してきましたが、現在ではよりよい社会を作ることによる心の豊かさへと企業の目的が変わりつつあります。
ウェルビーイングのメリット
勤めている企業がウェルビーイングを導入することで、従業員に次のようなメリットがあります。
- 安定したメンタル
- モチベーションの向上
安定したメンタル
企業がウェルビーイングを導入することで、従業員は精神的な健康を保ちやすくなります。ウェルビーイングは、従業員のメンタルヘルスを向上させ、ストレスの軽減、ワークライフバランスの促進、幸福感の向上などを通じて、幸福度と生産性を向上させます。
具体的には、ストレス管理のトレーニングやメンタルヘルスサポートを提供するなどさまざまな取り組みが挙げられます。これにより、従業員は仕事とプライベートの両方でより良いバランスを見つけやすくなり、心身の健康を維持することが可能です。
モチベーションの向上
従業員が幸福感を感じる職場環境では、モチベーションが高まり、創造性と効率が向上します。そのため、従業員一人ひとりの成長につながり将来のキャリアにも大きな影響を及ぼします。
幸福を感じている従業員は、仕事に対する情熱を持ち自己満足感を高めやすくなる傾向があります。業務に対するコミットメントが高まり、問題解決能力やイノベーション力が向上するなど従業員一人ひとりの成長につながります。
ウェルビーイングを構成するPERMAの法則
ウェルビーイングを評価する指標として、PERMAの項目が利用されることが一般的です。個人や組織がこれらの要素に焦点を当て、ポジティブな変化を促進することでより充実感のある生活や仕事環境を実現できます。
PERMAの法則は次の項目から成り立っています。
- Positive Emotion
- Engagement
- Relationships
- Meaning
- Achievement
Positive Emotion
Positive Emotionとは、ポジティブな感情を意味します。従業員一人ひとりがポジティブな感情を持って喜びや楽しみを見出せるかどうかを判断します。Positive Emotionの重要性は、個人の幸福感と生活の質に直接関係しています。
従業員がポジティブな感情を感じ、楽しんで仕事に取り組むことができれば、ストレスの軽減、自己満足感の向上、モチベーションの向上、仕事に対する取り組みが強化されます。ポジティブな感情を経験することは、個人の精神的な健康にも大きな影響を与え、ストレスや不安の軽減に寄与します。
Engagement
Engagementとは、従業員一人ひとりが仕事に没頭できる環境であるかどうかといった基準です。仕事に集中できる環境にあることが従業員の満足度向上につながります。集中できる環境が整備されている場合、従業員は作業に没頭し生産性や成果の向上につながりやすくなります。
企業はエンゲージメントを向上させるために、仕事の適切な設計や従業員のスキルや将来のキャリアプランに合った役割の割り当てを検討することが可能です。また、従業員の声を受け入れ、フィードバックを提供することも重要です。
Relationships
Relationshipsとは、同僚や上司、家族などとの人間関係において幸せを感じている状態です。健全な人間関係は、従業員が職場や生活全般で幸せを感じるために欠かせない要素です。良好な関係は、助け合い、信頼、支え合いの基盤を築きます。
職場では、協力的な同僚や上司との関係がストレスの軽減や問題解決に寄与し、仕事へのモチベーションを高めます。また、家庭や友人との関係性も大切です。家族や友人との人間関係が強化されると、精神的な安定感が増しストレスや孤独感が軽減されます。
Meaning
Meaningとは、人生に目的や意味を見出すことです。人生に意味を見出すことは、幸福感とウェルビーイングにとって極めて重要です。個人が自分の行動や努力に対して充実感を感じ、人生の目的であると認識することで一人ひとりのモチベーションを高め、精神的な安定感につながります。
仕事においては、自己実現や達成感を追求することが仕事をする意味を見出す一因となります。個人が自分のスキルや能力を活かし、課題を克服することで仕事に対する意味を感じることができます。
Achievement
Achievementとは、従業員一人ひとりが目標を達成することで成功体験を得ることです。達成感は個人の成長と幸福感に密接に関連しています。従業員が目標を設定し達成する過程で困難を克服することは、自尊心を高め、自己満足感を感じる機会を提供します。この成功体験は、自己評価を向上させます。
仕事において、達成感はモチベーションを高める要素の1つです。従業員が自身の業務で目標を達成することで、自己効力感が向上し、業務へのコミットメントが強化されます。組織は従業員に挑戦的なプロジェクトや成長機会を提供し、自己実現を追求できる環境を整備することが重要です。
ウェルビーイングを導入する方法
ウェルビーイングを導入する方法として次の内容が挙げられます。
- 健康診断やストレスチェックを実施
- 充実した労働環境を提供
健康診断やストレスチェックを実施
ウェルビーイングを導入するにあたって、従業員の健康確保やメンタル面の安定が必要不可欠です。そこで、健康診断やストレスチェックをおこなうことが重要です。健康診断は、従業員の身体的な健康状態を把握し、早期に問題を発見するための貴重な手段です。これにより、潜在的な健康リスクを特定し適切な対策を取ることができます。
法令に基づく健康診断は、労働者の権利を保護し、雇用主に従業員の健康に配慮する責任を課すものです。また、ストレスチェックは従業員のメンタルヘルスを評価し、ストレスが原因で生じる問題を予防または対処するための手法です。従業員が過度のストレスに晒されている場合、それが生産性の低下やメンタルヘルスの悪化につながる可能性があります。ストレスチェックを実施することで、ストレスの原因を特定し、必要な支援を提供できるようになります。
充実した労働環境を提供
健康面やメンタル面の安定以外に、充実した労働環境を提供することもウェルビーイング導入の重要な項目です。従業員が幸福で満足度の高い職場で働けることは、ウェルビーイングに直接影響があります。充実した労働環境は、職場文化や仕事の条件、コミュニケーションの質、ワークライフバランスなど、多くの要素から構成されます。
適切な労働環境を整備することで、従業員は仕事に対するモチベーションを高め、生産的で満足度の高い働き方ができます。さらに、適切な給与や福利厚生、柔軟な労働時間など、従業員の基本的なニーズを満たすことが、従業員の幸福感を高めます。ワークライフバランスの確保も重要で、過度な労働時間やストレスを軽減するために必要です。
ウェルビーイングを導入している事例
アシックス
アシックスでは、従業員の健康を重要視した健康経営に取り組んでいます。自社独自のプログラムを作ることで、健康度を評価したり個別に健康になるためのプランを作ったりしていることが特徴です。さらに、運動推進セミナーやメンタルヘルス研修の実施などさまざまな取り組みをしています。
アシックスは、お客さまにスポーツ文化や健康的な生活につながる商品・サービスを提供する企業として、従業員の健康は最も大切な要素と位置付けています。個人の成長とともに企業が成長できる企業文化の醸成のため、従業員のより健康的な生活の実現を目指し、"健康経営"に取り組んでいきます。
楽天
楽天は仲間や時間、空間を大切にした「三間(さんま)と余白」といった取り組みを実施しています。これらの取り組みは、組織や個人のウェルビーイングを向上させるために重要です。楽天は従業員同士の結束を高める取り組みをおこなっています。仲間との協力やサポートが、職場文化の健全性を向上させ、従業員の幸福感を高める役割を果たします。
参考:多様な働き方が進む、今こそ意識すべき「コレクティブ・ウェルビーイング」~持続可能なチームに必要な「三間(さんま)と余白」とは?~(Rakuten.Today)
まとめ
ウェルビーイングの導入は、従業員一人ひとりの体調面や精神面、社会面が満たされていることを総合的に考慮することが重要です。健康と幸福は体調が良いだけでなく生活全般の充実感と満足感にも関連しており、企業や従業員一人ひとりの成長につながります。
ウェルビーイングの導入は、従業員一人ひとりが異なるニーズを持つことを認識し、包括的なアプローチが必要です。体調の維持や精神的な安定は基本的な要素であり、健康診断やストレス管理プログラムなどを通じてサポートすることが求められます。